日本人はもともとエメラルドが大好きですから、もっとエメラルドが売れてもいいはずです。しかし、現実には「エメラルドは割れやすい」「あとでインクルージョンが現れてくるので、消費者からのクレームが怖い」などの理由から、ここ近年エメラルドの取扱いが減ってきています。
日本ジュエリー協会は2004年のイヤーストンをエメラルドに決定して、エメラルドの販売促進を図ろうとしています。それにはエメラルドの稀少性、美しさをアピールするとともに、取扱い上の注意を十分に消費者に説明していく必要があると思い、そのための説明資料を公開します。専門用語が多くて恐縮ですが、ご一読下さい。
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| なぜエメラルドは産出量が少ないのか？ |
エメラルドの母体は酸化ベリリウム、酸化アルミニウム、そして珪酸が組み合わされることにより形成されています。
化学式ではBe3Al2Si6O18と表わされ、これは「ベリル」という名前で呼ばれています。
不純物元素を全く含んでいないベリルは特別にゴッシェナイトと呼ばれ無色透明です。
このベリルにクロムが加わることによって、あの美しい緑色のエメラルドになります。
エメラルドの母体を構成する酸化ベリリウムと酸化アルミニウムは、一般に酸性の火成活動に伴う元素ですが、色をもたらしているクロムの方は、正反対の塩基性（アルカリ性）火成活動に特徴的な元素です。
この両極端の性質を持った成分が出会うことによって、初めてエメラルドが形成されるわけですから、それはきわめて偶然のことといえます。
世界中を探してみても、エメラルドの産出地が数えるほどしかない基本的な理由がまさにここにあります。
それだけに宝石の中でも、エメラルドは特別に貴重なものとなっているわけです。
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| なぜエメラルドはインクルージョン（内包物）が多いのか？ |
コロンビアのエメラルドは、堆積岩中の割れ目にある方解石の鉱脈の中に産出します。マグマによって温められた地下水が運んできた成分が、地表近くにあった成分と混じり合うことにより結晶が成長したものと考えられています。
クロムという元素が入り込むことによってベリルの結晶の成長を乱すため、結晶の内部に熱水母液（結晶が成長する前に、その結晶を形成するための成分が溶けこんで暖められた液体）を閉じ込めたり、亀裂を生じたりということが起こり、どうしてもインクルージョン（傷のように見える内包物）が多くなってきて、クリーンなエメラルドが産出されない最大の原因となっています。
結晶の成長過程で形成されたギザギザの輪郭をもったキャビティ（空隙）の中に、小さな四角い岩塩の結晶と炭酸ガスの丸い気泡、そしてそれらがキャビティ中に満たされた塩水の中に浮かんでいます。これら気体・液体・固体という３種類のインクルージョンが１つの結晶の中に見られる、いわゆる三相インクルージョンが、結晶が成長していくにつれ、多くの母液を内部に閉じ込めて、最終的には美しい平面でとり囲まれた結晶が誕生します。
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| なぜエメラルドには含浸プロセスが必要なのか？ |
いくら美しくとも、宝石は磨きあげなくては最大の美しさは得られません。
磨きあげるということは、結晶を切り出してその内部を新たに露出させることになります。その結果、内部の母液を含んだ空隙がカット面の表面に切り出されてしまい、そこに含まれていた母液が流出してしまいます。
つまりカットした石の表面に小さな凹みが生じ、それが石の内部にまでつながることも多く、エメラルドの表面や内部にまでつながっている間隙が無数にあるほどその内部で光りの散乱が起こり、その石は白っぽく傷だらけに見えてしまいます。これも多くの宝石の中でエメラルドだけの特性といっていいかもしれません。
またこの石を研磨するときには、酸化錫の研磨円板の上で酸化クロムをこすりつけて磨き上げるのですが、そのときにエメラルドの研磨面から研磨剤がどうしても空隙に入り込んでしまいます。
この研磨剤は青黒いような汚い緑色をしており、せっかくの美しいエメラルドの色を損ねますで、必ず研磨後に強い酸を使ってその汚れを洗い落とします。そのため汚れが完全に洗い落とされると同時に、エメラルドの内部の多くの隙間もはっきりと強調されてしまいます。
そこでエメラルドが研磨される前に本来持っていた美しい状態に復元させるために、乾性油またはエポキシ樹脂による含浸という工程はどうしても避けられないのです。
このためエメラルドはダイヤモンドのような頑丈な宝石とは異なり、特に丁寧に取り扱わなくてはなりませんし、超音波洗浄器を使用してはなりません。含浸されていた乾性油やエポキシ樹脂が抜け出てしまうことがあるからです。
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