ダイヤの選び方 カットについて |
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ダイヤの輝きを決める3つの要素 |
ダイヤモンドのまばゆいばかりの輝きは、主に次の3つの要素から成り立っています。 |
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1. ブリリアンス(光輝) Brilliance または ブライトネス Brightness |
クラウン側(上部)から入った光がパビリオン側(下部)で全反射を繰り返して、再びクラウン側から出てくると、まばゆいばかりの白色の輝きになります。 |
2. ディスパーション(光の分散) Dispersion または ファイアー Fire |
ダイヤに入った光が内部で屈折・反射を繰り返している間にプリズム効果が生まれて、クラウンから出てくるときに、虹色の輝き(スペクトル・カラー)を出します。 |
3. シンチレーション(閃光) Scintillation |
ダイヤのクラウン側の33面(ファセット)に当たった光が、見る者の眼の動きまたは光源の動きによってキラキラとする光のフラッシュ効果(スパークル)をもたらします。また内部及び外部反射に起因する明るい部分と暗い部分の相対的な大きさ、配置およびコントラスト(パターン)によって明るさが変わります。 |
* このほかに、表面の反射光を光沢(Luster)と呼びます。 |
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ダイヤモンドの輝きは、この3つの要素の相乗効果で起こるものです。 ところが、ブリリアンスを優先して考えると、テーブル面はある程度広い方が良いのですが、ディスパーションを優先して考えると、テーブル面はやや狭い方が良いのです。
カットグレードが低いと、どちらかに偏りがちですが、グレードが上がるほど両者のバランスが良くなり、どちらも輝くようになります。
カット評価がトリプル・エクセレント・ハート・アンド・キューピッド(3Ex H&C)でしたら、テーブル径が狭くても広くても、ブリリアンスやディスパーションの違いが分かることはほとんどありませんので、余り神経質になる必要はありません。 |
カット評価の歴史 |
1919年にマルセル・トルコウスキー氏が有名なトルコウスキー・カットを発表しました。これは当時研磨の名人と呼ばれた5人のダイヤモンド研磨職人に、彼らが最も輝くと思われるダイヤモンドを提出してもらい、その平均値を算出したもので、実際の個々の計測値をみると、かなりのバラツキがあります。したがって、絶対にこのカットでなければならないというようなアイデアル・カットとかパーフェクト・カットというものはないと言って良いでしょう。
従来、GIAではカットのデータだけを表示し、カットのグレーディングは行なっていませんでしたが、消費者への情報開示という観点からすれば、カット評価がないということは、あまりにも不親切です。そこで日本ではAGL(宝石鑑別団体協議会)が1994年6月から、カットの総合評価を開始しました。このカットの総合評価は、理論値にどれだけ近いかを基準にして5段階評価したので、業者にとっても、消費者にとって分かりやすく有益であると好評でしたが、綺麗に見える、キラキラ輝くという点で、100%正しいとは言えないという声も一部にはありました。
それに応える形で、2006年1月、GIAでは主観評価も加えてカットの総合評価を開始しました。
AGL方式がカットの理論値にどれだけ近いか、パーセントや角度といった数値を中心に評価していたのに対し、GIA方式では、ペインティングやディギングアウトといった新しい概念を加え、さらに主観評価の結果をデータベース化し、それらをサリンやオギという自動プロポーション測定器にソフトとして組み込んで判断するようにしました。
これを受けてAGLでは、日本においても2006年4月1日からGIAシステムに基づくカットグレーディングシステムに移行しました。 |
カットの総合評価(GIA方式) |
1.評価の対象となるダイヤモンド |
@ |
形状はラウンドブリリアントカットであること。ファンシーシェイプは対象外。 |
A |
クラリティはFLからI3まで。 |
B |
重量は自動プロポーション測定器で測定可能な範囲内。 |
2.評価の要素 |
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ブライトネス、ファイアー、シンチレーション、重量比、耐久性(ガードル厚)、ポリッシュ、シンメトリー |
3.評価の手順 |
@ |
GIA FacetwareR Cut Estimatorが3850万通り以上の組み合わせパターンの中から推定カットグレードを表示します。 |
A |
目視評価要素の評価をします。
ガードルの厚さ(Extremely Thin, Very Thin, Thin, Medium, Slightly Thick, Thick, Very Thick, Extremely Thick)、
キューレット・サイズ(None, Very Small, Small, Medium, Slightly Large, Large, Very
large, Extremely Large)
シンメトリー(Excellent, Very Good, Good, Fair, Poor)
ポリッシュ(Excellent, Very Good, Good, Fair, Poor)
ブライトネス、ファイアー、パターン |
B |
@の推定カットグレードの結果とAの目視評価要素とを総合的に判断して最終グレード(Excellent, Very Good, Good, Fair, Poor)を決定します。 |
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ハート&キューピッド(Heart & Cupid)について |
近年になって、カットを見る特殊な器具(商品名・ジェムファンタジーあるいはジェムスコープ)を使うとプロポーションとシンメトリー(対称性)の優れているダイヤモンドには、テーブル側から見るとアロー・マークが、パビリオン側から見るとハート・マークが見えるということが発見されました。
そこで、この現象が見られるダイヤモンドを「ハート・アンド・アロー」と呼んでいたのですが、「ハート・アンド・アロー」が、ある業者によって商標登録されてしまったため使えなくなり、それに代わって中央宝石研究所が「ハート・アンド・キューピッド」(H&C)を商標登録して無償で公開したため、日本国内では「ハート・アンド・キューピッド」(H&C)という名称が広く使われるようになりました。
現在ではアメリカのE-SHOPなどでも、ダイヤのカットとしてHeart & Arrowを表示している業者が多くなってきています。
大抵はカット評価がExcellentのダイヤモンドに見られますが、稀にVery Goodのダイヤモンドにも見られます。逆にトリプル・エクセレントのダイヤモンドであっても、H&Cが見られないものも存在します。
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パビリオン側からのハート・マーク |
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テーブル側からのアロー・マーク |
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トリプル・エクセレント(Tripple Excellent)について |
カットの総合評価がExcellentになる条件としては、テーブル径やクラウン角度などの評価要素が一定の範囲内に入っていれば、シンメトリーとポリッシュはそれぞれVery
Good以上であれば十分です。
総合評価ばかりでなく、シンメトリーもポリッシュもExcellentと評価されるダイヤモンドを、トリプル・エクセレント(Tripple Excellent)と呼ぶようになりました。これは、GIAの基準ではなく、業者が独自に名付けたグレードです。
しかし、トリプル・エクセレントのダイヤモンドは、ほとんどハート・アンド・キューピッド現象が見られますので、普通のExcellentよりも価格的に高い評価を受けていますが、ジュエリー店の中には、「トリプル・エクセレント・カットは、日本独自規格で海外では通用しない」とか「トリプル・エクセレントとエクセレントにほとんど違いはない」などと、苦し紛れの説明をしているところもあります。 |
ラウンド・ブリリアント・カット以外のカットについて |
ダイヤモンドの屈折率から考えると、オーバル(楕円形)、ハートシェイプ(ハート形)、ペアシェイプ(ドロップ型)、マーキーズなど、いわゆるファンシー・シェイプには、ラウンドのように理論的に割り出されたカットの基準がありません。そこで、ファンシー・シェイプにはカット評価はしません。
ただし、中央宝石研究所の鑑定書では、研磨の状態(Polish)と対称性(Symmetry)については評価を記載しています。
普通のラウンド・ブリリアント・カットは、クラウン側に33面、パビリオン側に25面(キューレット1面を含む)、合計58面のファセットがあります。
それより多い、86面カット、102面カット、144面カットなど、いわゆる多面カットは、普通より多いファセットを作ることによってシンチレーションやディスパーションを多く発生させて、余計キラキラとするように考えられたカットです。しかし、多面カットは、58面カットと較べると、当然のことながら、1つの面が小さくなりますので、0.5カラット未満のような小さなサイズでは、その効果を十分に発揮できません。実際に58面カットと比較して、お買い求めになることをお薦めいたします。
これら多面カットはカットに付加価値を付けて販売されていますが、カット評価の対象にはなっていません。 |
クラリティとの関係について |
ダイヤモンドの輝きを決める3つの要素からも分かるように、ダイヤモンドの内部が透明でなければ、いかにカットが良くても、輝きが十分には出ません。クラリティ・グレードがSI1以上ならば、カットの良さを発揮できますが、SI2以下になると、内包物によって光の反射が吸収されてしまいます。
良いカットには、良いクラリティをバランスよく選んでください。 |
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