-ジュエリー業界へのささやかな提言-

 中小企業を直撃する来年度の大幅増税措置 2006/03/07
現在、国会で審議中の18年度税制改正で、中小企業には大幅増税となる制度が新設されます。「役員給与の損金算入の見直し」という項目です。
この制度が新設されると、オーナーの年間の役員給与が800万円以上の場合、給与所得控除分が損金に認められなくなります。
その結果、たとえば、社長の報酬が年間800万円、会社の所得が200万円の会社の場合、法人税、住民税、事業税を合わせて、今までは68万円の税金で済んでいたものが、改正後は130万2千円と90%以上の増税になります。
財務省では、プロ野球選手や芸能人が節税のために一人会社を作っているので、個人事業主と較べて不公平だという理由を挙げていますが、この規制は純粋な一人会社だけでなく、例えば、現に多数存在する、夫婦で100%株式を所有する会社を設立し、その運営も夫婦が取締役としてあたるような、いわゆる3ちゃん企業も対象としています。
財務省の論理はトリックで、会社に較べて不利益を受けている個人事業主の給与控除相当分を税金から差し引くというのが本来の筋ではないのでしょうか。
もともと、ベンチャー企業育成のため、5月から施行される新会社法で一人会社を認める方向になったのではないのでしょうか。ベンチャー企業は財務基盤が弱いのですから、なるべく税金を取らないようにしなければならないのに、これではベンチャー企業など育たないでしょう。

*顛末 平成22年度にこの措置は廃止されました。

 インフレに備えよう 2005/08/24 
デフレがあまりにも長期間続いたため、日本人はインフレ時代をすっかり忘れてしまったようです。
しかし、すべての指標は確実にインフレの兆候を示しています。
原油高騰は未だ続いています。原油が上がれば、ほとんどすべての工業製品の原価が上がります。船舶・航空貨物運賃の上昇で、輸入原価が上昇します。それは輸入製品価格ばかりでなく、飼料や輸入農産物の上昇を経て、国内産の農産物・畜産物価格、ひいては食品全体の価格を引き上げます。
8月1日に発表された路線価では、東京都が13年振りに上昇に転じました。都道府県庁所在都市の最高路線価を見ると、上昇したのは東京(9.9%)、名古屋(9.3%)、福岡(5.9%)、横浜(4.8%)、京都(3.6%)、大阪(2.0%)の6都市となっています。
ジュエリー関連でも、金やプラチナ地金価格は上昇を続けていますし、ダイヤ価格、色石価格も今年に入って大幅な上昇を見せています。
インフレになれば、確実に金利が上がります。仮に金利が2%上がれば、1億円の借入金に対して年間200万円の金利増になります。200万円以下の利益しか上げていなかった企業は赤字に転落します。金融庁の厳格査定の影響で、赤字企業に対する銀行の態度は厳しくなっています。
今までの利益は低金利のおかげだと言うことに気付かなければなりません。低金利から普通の金利になっても、十分に耐えていかれるだけの準備が必要でしょう。
消費者のマインドも変わってきています。もうこれ以上経済が悪くならないと、みんなが思い始めています。今までは安くなければ売れないからと言って、金額を抑えた商品ばかり仕入れて販売していた営業方針を、そろそろインフレ時代にふさわしい品揃えに変えていく時が来ているのではないでしょうか。
また、消費者物価が上がっても、給料が上がらなければ、必需品以外の購入意欲は減退します。特に、食料品価格の値上がりが予想されますが、そうなると、ジュエリーにまわるお金は少なくなります。それでもジュエリーを買いたくなるような戦略がジュエリー産業全体に必要でしょう。

 高級ブランド品 日本で減速 2005/03/01 
2月12日の日経夕刊が「高級ブランド 日本で減速」と題した記事の中で、ティファニーなど、これまで急成長してきた海外高級ブランドで売上の伸びが鈍化していると報じ、出店ラッシュで競争が激化した上、若い女性の志向や消費の変化をその原因にあげています。
ゴールドマン・サックス社の調査によれば、高級ブランド品の国・地域別消費者シェアでは、日本が全世界の41%を占めているという、異常なまでのブランド信仰がありました。
「外国では高級ブランド品を持つのは超富裕層と娼婦だけ」と揶揄されてきたにもかかわらず、日本で若い女性が争うようにブランド品を買ってきたのは、非常に洗練された大規模なマーケティング戦略によるものでした。
原価と売値との非常に大きな価格差を広告費に惜しみなくつぎ込んで、ブランドイメージ維持のために使ってきた手法は、需要を増大させましたが、同時に、誰もが持つことによるステイタスの下落というリスクを抱えていました。
誰もが持てる物ではないからこそ、ステイタスがあったにもかかわらず、売れるからといって販売を増やせば、誰もが持っている普通の物に成り下がってしまうわけです。
今までは憧れでしかなかったブランド品を実際に使ってみると、価格差ほどの品質差がないことに、消費者は気付いています。むしろ、高級ブランド品よりも良いものが幾らでもあるのです。
ブランド品メーカーの利益至上主義は、本来、丁寧な手作りで高い評価を得ていたことを忘れて、工業製品化を進めています。
現在、ブランド・ジュエリーは本国ばかりでなく、タイや中国でも生産しています。最近、日本ジュエリー協会に持ち込まれる苦情でも、かつてはなかった高級ブランド品に関するものが出てきました。ブランド品のイメージにあぐらをかいて、品質を軽視している表れでしょう。
私達、国内のジュエリー業者としては、純国産品であることをアピールする良いチャンスが巡ってきたと捉えて、積極的にマーケティングを展開すべきではないでしょうか。

 色石はなぜ売れなくなったのか 2004/01/18 
色石が売れていません。それには様々な原因が考えられますが、そのうちの1つについて考えてみました。
古来、宝石は権力者の権力や富の象徴として使われてきました。宝石は非常に高価で、権力者以外が身につけることは出来なかったからです。しかし、美術館や博物館などで当時の宝石を見ると、大きさは充分ありますが、お世辞にもカットが良いものはあまり多くありません。
現代では宝石のカット技術が進歩して、それぞれの宝石の持つ美しさを引き出すために、様々なカット宝石が考案されてきました。特にダイヤは、コンピュータ画像を見ながら研磨できるようになって、トリプル・エクセレント、ハート・アンド・キューピッドなどが考案され、かつてとは較べものにならないほど美しくカットできるようになりました。
一方、色石はどうでしょう。いまだに歩留まりが優先されていないでしょうか?旧来からのカットにこだわっていないでしょうか?
たとえばエメラルドといえばエメラルド・カットということになっていますが、オーバル・ミックス・カットにしたらどういう輝き方になるか、考えたことがあるでしょうか?当社にコロンビア・チボール鉱山産のオーバル・ミックス・カットのエメラルドが1個だけありますが、本当にキラキラ輝いています。
宝石は美しさが基本です。キラキラ輝いてこそ、その美しさに惹かれて、身につけたいと思い、買っていただけるのではないでしょうか。それには色石のカットについて、もっと考える必要があると思います。

 消費税総額表示の隠された意図 2004/01/06 
今年4月から消費税の総額表示が実施されます。
商品数も多いので値付け作業が大変だ。コンピュータ・プログラムも直さなければならない。特にジュエリーの値札は小さいので、税抜価格と税込価格の両方を表示することはできないから、値札はすべて取り替えなければならない。などなど、不平不満だらけです。
消費税説明会で財務省の担当者も言っていたように、消費税率の引き上げごとにこんな作業をさせられるのでは困るから、税率引き上げがしにくくなります。
どうしてこんな手間をかけて、なおかつ税率引き上げにマイナスとなるような総額表示に変更しなければならないのだろうと不思議に思っていました。
これには財務省の遠大な計画が隠されていたのです。複数税率の導入です。
税率を20%まで引き上げるとすれば、生活必需品には低税率を、贅沢品には高税率を、という議論が必ず出てきます。たとえば20%、15%、10%の3段階の税率を採用した場合、外税表示だったら消費者は一体幾ら払えばいいのか分からず混乱する。それを防ぐためには総額表示しかありません。
複数税率になれば、ジュエリーは必ず贅沢品として最高税率がかけられます。物品税の時は小売段階だけの課税だったので免税点がありましたが、消費税では仕組み上、免税点を作ることは困難です。
メロンと宝石」でも述べたように贅沢品とは何なのでしょう。鯛の尾頭付きと1万円のピアスのどちらが贅沢なのでしょうか。
消費税額もきちんと表示して、将来の複数税率導入に反対の意思表示をしてはどうでしょうか。








当ホームページ内の画像および文章の無断引用、掲載は固くお断りします。Copyright ©Takara Kiho. All rights reserved.