-ジュエリー業界へのささやかな提言-


ジュエリー・フェア乱立を見直すべき時 2003/9/15
ジャパン・ジュエリー・フェア2003が終わりました。来客数は昨年よりダウンしましたが、会場を見回した限り、昨年より来場者が多いように感じました。ということは、入場してからの滞在時間が長いと云うことになります。実際、ただ見て回っている人よりも商談をしている人の方が多いように感じました。出展者への聞き取り調査でも、昨年より悪かったという回答はありませんでした。
これに対して、9月1日に有楽町の交通会館で開かれた東京ジュエリーフェアは入場者が875人と云うことです。
このところ大きなフェアには来場者は集まるが、小さなフェアには集まらないという傾向が次第に強くなってきています。ランチェスター法則がジュエリー・フェアにも効いてきているようです。
ところで、多くのトレードフェアで「昔ほど売れなくなった」「出展料に見合う売上を作れない」という声を聞きます。毎月必ず1つか2つのトレードフェアが開催されています。同じ顧客を取り合うのですから、1つのフェアでの来場者数が減るのは当然です。どうしてこんなにトレードフェアが増えたのかと云えば、従来の販売方法では売上減少に歯止めがかからず、フェアに出展すれば、当日はそこそこの売上が見込めるからということでした。ジュエリータウンおかちまちでも当初は年2回だったのが、現在では年4回にもなっていますが、1店1回あたりの売上は一昨年をピークに落ち始めています。「苦しいときの展示会頼み」という考え方も壁に突き当たってきています。
来場者から見たトレードフェアの目的は、たくさんの商品を同時に見ることによって、売れ筋の傾向、新しい動向、新商品の発掘、お買い得商品の購入、新規仕入先の開拓などができることです。
しかしながら、こうした考えが成り立つのは、ジュエリーが消費者に売れているという前提があってのことです。小売店が在庫を多く抱えていては、新しい商品を買う気にはなりません。不況でジュエリーが売れないと嘆く方が多いようですが、海外ブランド・ジュエリーは相変わらずよく売れているのですから、消費者には購買力はあるのです。それが購買に結びつかないのは、今まで消費者に対するアプローチを怠ってきたためです。
消費者は何が流行っているのか、どこで買ったらいいのかという情報を求めています。小売店も何を売ったらいいのか、どうしたら売れるのかという情報を欲しがっています。
これからのジュエリー・フェアでは何よりも消費者に対する情報発信が重要になると思います。
出品商品を小売店に買ってもらうだけでなく、雑誌やテレビなどのマスコミ媒体に取り上げてもらうことによって、消費者から指名買いが来るようなシステムを作り上げていく必要があると思います。
こういったことができるのは、やはり大きなフェアしかないでしょう。それぞれのフェアにはそれなりの思い入れ、歴史もあると思いますが、ここは思い切って大同団結する必要があるのではないでしょうか。
それと、小売店が共同で消費者向けのジュエリー・フェアを開催できないものでしょうか。メーカや問屋頼みでなく、自分たちでフェアを開催して、自らのリスクで消費者を引っ張り込んでこそ、ジュエリー業界が活性化すると考えているのは私だけでしょうか。


ホームページ批判への反論 2002/11/16
私がこのホームページのNEWSとOPINION欄で、新技法パパラチャについて書いていることについて、業者の方々から直接間接にご意見を頂いております。特に週刊女性セブンに「加熱パパラチャは処理石として扱うべきだ」というコメントがJJA理事の肩書き付きで私の名前が出されたことから、私への批判がJJAに届いております。ご自分の実名を明記して批判された文書のひとつは「ホームページで内部告発であるような内容が見受けられ」「自社の利益の為に一般ユーザーに媚びている」「なぜ処分しないのか」というものです。もうひとつは「無責任な掲載に応じたJJAの理事たから貴宝に退任していただくよう強く要求いたします」というものでした。
まず、誤解を避けるために、私が週刊女性セブンにリークしたのではないことを申し上げておきます。私が「1000 円の石が100万円」などと言うはずはありませんし、処理石が天然石でないかのような記述を認めるはずもありません。今回の場合、色石問題特別委員の立場上、きちんと取材に応じなかったために、正しく報道されなかった事を悔やんでおります。
「自社の利益の為に」と言われますが、当社は色石とダイヤモンドの裸石卸商です。色石については小売などほとんどありません。消費者に媚びる必要はまったくありません。媚びているかどうか、このホームページ全体を見ていない人のご意見だと思います。
JJA 理事であるからといって、自分の意見を業界外へ発信してはいけないというのは、おかしな事です。政治家は党の決定に反する主張を堂々とします。その主張に対して世論が賛否の意思表示をして、国会の決議に反映される。それが民主主義ではないでしょうか。発信しては困るような事があることが問題なのです。ジュエリー業界が消費者から信頼されるためには隠し事をしないことだと信じています。たとえば、真珠の調色についても、E-mail での質問に、買うときの色の選び方やお手入れの仕方をきちんと説明すると、消費者は納得されます。
知りたいことはインターネットで検索する時代になっていますが、検索した情報が間違っていたとしても、それが真実であるかのように信じられてしまいます。今まで、そして現在のマスコミ報道がそうであることは、皆さんがよくご存知のはずです。ジュエリー業界の情報で、本当に知りたい情報を、どこが正しく伝えているのでしょうか。私のホームページがその一助になればという気持ちで開設しています。また、マスコミに対しても、他の人達が適当なことを言うならば、それよりも自分が話して正しい情報を伝えた方が良いという考え方で、積極的に受けるようにしています。勿論、自社の利益のために発言しないよう、注意しています。
賛成のご意見は直接言ってこられますが、批判のご意見はほとんど間接的です。私への批判はその方達の利益を図るためには都合の悪いものであって、決してジュエリー業界全体の利益とは合致しないからではないでしょうか。過日のJJA理事会においても、私に対する批判はまったく出なかったことを申し添えておきます。
すべての問題で私の意見が業界の多数意見ではないと思います。しかしながら、今年大問題となったJIS指輪サイズ、新技法パパラチャについて、JJA 理事会での私の主張は、当初、奇異の目で迎えられましたが、結局は私が主張したような方向に動いています。時が経ち事柄を深く理解すれば、私の主張の正当性、合理性を他の理事の方々も理解してくれたものと考えています。
私の主張に反対のご意見も多々あると思います。その場合は、実名でお申し出下されば、匿名でもご意見を掲載させていただきますし、リンクを貼らせていただきます。


鑑別表記の本当の問題点 2002/8/8
新技法サファイアについて、従来通りの区分による表記法を採るべき、つまり処理石と明示すべきだというのが大方の業界人の意見だ。しかしながら有力業界人の中にコメント表記法を支持する意見があり、決着にはもう少し時間が掛かりそうだ。
どちらに決着するにしても、ルール通りならば、とりあえず、それは良しとするとして、大きな問題が別にある。宝石鑑別団体協議会(AGL)に加盟していない鑑別会社には、このルールは適用されない。
もしも、その鑑別会社が「我々の基準では、新技法サファイアは処理石とは認めない」として「天然パパラチャ・サファイア」として鑑別書を発行したらどうなるであろう。事情を知らない消費者は天然パパラチャ・サファイアと信じて買ってしまうだろう。現に、今回天然パパラチャ・サファイアの鑑別が出ると当て込んで輸入したサファイアは50億円以上にもなるという。これらの石を販売するために、AGL 非加盟会社の鑑別書を付けて売ろうと考える業者がいても不思議ではない。
JJA とAGLが合意した鑑別表記法がAGL会員以外にも採用されるような強制力が必要ではないか。独占禁止法(正しくは、私的独占の禁止および公正取引の確保に関する法律)第2条に不公正な取引方法の1つとして「不当に競争者の顧客を自己と取引するよう誘引し、又は強制すること」を挙げ、、これを受けて、公正取引委員会は不公正な取引方法として「(ぎまん的顧客誘引)自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について、実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること。」と告示している。こうした法律の規定に従って、自動車業界や食品業界などは公正競争規約を作り、業界全体が規約に従うようにしている。
私達ジュエリー業界も、消費者の被害が出る前に、公正競争規約を検討する必要があるだろう。


新技法サファイアの鑑別表記について 2002/7/21
すでに海外では新技法サファイアは処理石であると決着しているにもかかわらず、日本では表記方法についてまだ揉めているようだ。通常、処理石であれば鑑別書には「天然サファイア(処理石)」と表記される。しかしながら、今回の技法は今まで想定されていなかった新しい技法だから、従来の定義通りの表記法はおかしいという意見が出ている。
つまり、鑑別の表記は「天然サファイア」として、コメント欄に「この石はバルク・インクルージョンという技法により色の改良がされたものである」というようなコメントを小さく表記しようということである。そうすれば、消費者は「天然サファイア」という表記にしか目がいかないだろうが、ちゃんと処理方法の記述はしていますよという姑息な考えである。
そもそも宝石の処理は、新しい技法の開発と、それを見破ろうとする鑑別機関とのいたちごっこの歴史である。新しい技法だから新しい定義を考えるというのは、原則無視の暴論なのだが、この業界ではそれがまかり通るのである。鑑別最大手に都合が悪いことは、国連の常任理事国のように拒否権が発動され、多数決では決まらないのだと、私が常々言っていることが今回も行なわれている。自分たちの目先の利益だけ考えて、業界の長期的な信用維持を考えていない人たちが、業界のリーダーであることは、何とも嘆かわしいことである。業界の良識派に頑張ってもらうしかない。


鑑定は統一できないのか 2002/5/31
誤解を避けるために申し上げますと、現在のAGLのダイヤ鑑定システムは世界に類を見ないほど素晴らしいものであり、本家本元のGIAよりも優れています。また、JJA/AGLカラーマスターストン制度も、世界に誇るべき自主規制システムです。 しかしながら、それに甘んじることなく、消費者への情報公開を進めるためにも一層の改善が必要だと考えています。AGLでは鑑定の誤差の許容範囲は1グレードであり、その範囲内に納めるため、定期的に会員間の相互チェックをしていると言っています。
それならば、我々業者からすれば、A社のソーティング結果をそのままB社で鑑定書として発行してもらいたいのですが、同じ結果にならないことがしばしばあります。B社に対して何故発行できないか訊くと、「当社の基準ではどうしてもそのグレードにはなりません」という答が返ってきます。逆もあります。B社のソーティング結果通りにはA社で鑑定してくれません。何故かと問えば「当社の基準では云々」と同じような答が返ってきます。ダイヤは1グレード違えば10〜15%価格が違う訳ですから、各鑑定会社間できちんと統一してもらわないと、グレード差を利用して儲けようとする業者が出てくることになり、結局、消費者の不信を招くだけです。これからはISO鑑定基準を導入する会社も出てくるかも知れないので、現在のシステムの優位性、正確性をアピールするためにも、鑑定基準の統一が避けて通れないと思います。それにはAGL加盟各社間のソーティングと鑑定書発行の相互乗り入れを1日も早く実施してもらいたいものです。これを実施すれば加盟会社間の相互チェックが一層厳しくなり、鑑定誤差は非常に少なくなることは間違いありません。


 






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