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アコヤ真珠を使ったミキモト製の携帯ストラップ。普段使いを意識して“小物”にも用途を広げる=3月、東京・銀座
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「ジュエリーだけではない。ブランドバッグやアクセサリーも脅威になっている」。日本ジュエリー協会の常任理事で自らも宝石小売店を経営する増井雄二・
タカラ貴宝社長(東京)は、国内進出が後を絶たない海外ブランドについて「(国内小売店は)深刻な影響を受けている」とみる。海外ブランドのジュエリーと
では、「売れ筋」(増井社長)の二十万~五十万円のクラスが最も競合している、という。
海外ブランドの勢いが止まらない。帝国データバンク(東京)が二〇〇三年度の海外ブランド四十二社の法人申告所得を集計した結果、合計で千二百五億円にも上った。同社によると、一九九三年の調査開始以来、最高額を更新、当時の三・五倍に膨らんだという。
対照的なのが国内の宝石小売業界。日本ジュエリー協会の調べでは、国内の宝石販売額のピークはバブル時(一九九〇年度)の約三兆円だった。それが、年
々、減少し現在は一兆二千億円程度(このうち、真珠製品は約二千億円)と試算。海外ブランドの“栄華”をよそに、国内の小売り現場は不振にあえいでいるの
が現状だ。
増井社長は「国内小売店はマーケティングやブランド力をはぐくむ意識に乏しかった」と自戒を込める。売価と原価の差が著しいというのが、海外ブランドに
対する業界の一致した見方だ。しかし、その価格差を膨大な広告宣伝費などに投入することで、「ファッション性の拡大とブランドイメージを築いてきた」と分
析。スーパーなど日常の場で海外ブランドのジュエリーやバッグを持った女性の姿が目を引くのも、「日本人のブランド志向に加え、普段から身に着けられる
ファッション性があるからだろう」。
国内有数の真珠小売メーカー、ミキモト(東京)は、真珠小売業界が不振にあえいできたこの十年余りの間に、逆に国内の販売シェアを伸ばしてきた。ミキモ
トに並んで大手の田崎真珠(神戸)も、国内販売ベースではあまり落ち込みはみられない。ブランドが認知されている販売店は、国内外を問わず健闘しているよ
うだ。ここにも消費者のブランド志向が見て取れる。それでも、ミキモトの森仁志取締役営業本部長は「ジュエリーとアクセサリーの境界が薄れてきた。真珠も
冠婚葬祭以外の用途を広げなければ、他の高級品の中に埋没してしまう」と危機感を隠さない。「海外ブランドのファッション性、話題づくりには学ぶところが
ある」とも。
このため、従来のネックレス、ピアスといったジュエリーにとどまらず、最近は腕時計、携帯ストラップ、ペンダント、中にはボールペン、写真立てなどにも
真珠をあしらってカジュアル性を重視した製品開発に力を入れる。値段も数千円台からと手ごろにしたことで、「若い世代の購入が増えている」(森営業本部
長)と手応えを感じている。
「用途を限れば需要は伸びない」(増井社長)。フォーマルから普段使いの幅をどこまで広げるか、その“提案力”が真珠小売業界のカギと言えそうだ。